特集 輸液・ボリューム管理
Part 1 総論
【コラム】balanced crystalloid—アセテート(酢酸リンゲル),Plasma-Lyte
牧野 淳
1
Jun MAKINO
1
1自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
pp.300-303
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200381
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輸液は重症あるいは周術期患者において欠かせない治療選択肢の1つであるが,どの輸液製剤をどの程度投与すべきかについては,コンセンサスが得られていない1)。酢酸リンゲル液やPlasma-Lyteは,晶質液のなかでもヒト血漿成分の組成に近いことからbalanced(buffered)crystalloidと呼ばれ,生理食塩液と比較して腎障害や凝固障害などの副作用が少ないため,近年注目を浴びるようになってきた1)。その反面,輸液製剤による直接的な影響は長くても24〜48時間であること,また,balanced crystalloidによる弊害も指摘されるようになり2),balanced crystalloidの臨床的優位性は確立されていない。
本コラムでは,balanced crystalloidが脚光を浴びるようになった背景を紹介し,balanced crystalloidのなかでも,なぜアセテートやPlasma-Lyteが好ましいのかを生理学・薬理学的に述べるとともに,最新の知見について概説する。
Summary
●アセテート,Plasma-Lyteは晶質液のなかでも,ヒト血漿成分に近いことからbalanced crystalloidと呼ばれている。
●生理食塩液負荷に伴う腎障害・凝固障害が知られるようになり,balanced crystalloidが輸液製剤の第一選択として注目されるようになってきた。
●balanced crystalloidは生理食塩液と比較し副作用は少ないものの,長期予後の改善までは証明されておらず,また,各balanced crystalloid間での比較試験も行われていない。
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