特集 心臓血管外科 後編
術後合併症
7.対麻痺—遅発性対麻痺への対応と,脊髄ドレナージ合併症予防の時代へ
清水 淳
1
Jun SHIMIZU
1
1榊原記念病院 麻酔科
pp.179-188
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200252
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対麻痺は,脊髄両側の錐体路の障害により発生する下肢の運動障害である。脊髄前角細胞よりも上位の運動ニューロンの障害では痙性麻痺となり,下位運動ニューロンの障害では弛緩性麻痺となる。脊髄の虚血性障害では,一般に上位運動ニューロン障害が起こるが,この場合でも急性期には脊髄ショックのために弛緩性麻痺を呈する。術直後に弛緩性麻痺を認めた場合は前脊髄動脈症候群の他の症状〔外側脊髄視床路の障害による温痛覚障害(触覚,深部感覚は保たれる)や自律神経路の障害による神経因性膀胱,直腸障害〕を併発しているか否かが鑑別のポイントとなる。合併している場合には,弛緩性麻痺であっても,上位運動ニューロンの障害の可能性が高い。本稿では主に対麻痺に関して取り扱うが,運動障害以外の障害も合併することをご記憶いただきたい。
Summary
●低体温,遠位側灌流,脊髄ドレナージなどの対策により急性の対麻痺の発生率は減少してきている。
●一方で,遅発性対麻痺はむしろ増加傾向にあるとされ,発症機序の解明を含めた対策と治療が重要度を増している。
●脊髄動脈の循環に関するCollateral Network Conceptの登場に伴い,新たな治療戦略が登場してきている。
●脊髄ドレナージは最も広範に用いられている治療戦略であるが,合併症に対する対策が今後重要となる。
●ステロイドを含めて,虚血性対麻痺に対して有効性を証明された薬物は存在しない。
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