神経疾患リハビリテーションの実際・II
対麻痺・1
上田 敏
1,2
1東大・中尾内科
2東大・中央診療部運動療法室
pp.1348-1350
発行日 1965年9月10日
Published Date 1965/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200984
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対麻痺には脊髄炎,クモ膜炎,脊髄腫瘍,外傷性脊髄損傷によるもの,また脳性小児麻痺の対麻痺型,脊椎被裂など先天性のものがある。またギランバレー症候群,多発性神経炎が対麻痺型をとることも多い。リハビリテーション・プログラムはこれらにほぼ共通している。ここではまず完全麻痺についてのべ,不全麻痺はその後にふれる。
一般的にいつて,対麻痺はその麻痺の高さ(髄節レベル)によつてリハビリテーションのゴール(到達目標)がほぼ推定される。いいかえれば対麻痺では片麻痺とことなり,かならずしも麻痺そのものの回復を期待せず,上肢と躯幹の残された機能の強化により(また装具の着用により)失なわれた機能を補なうことが根本方針である。また対麻痺では下肢装具を着用すれば松葉杖歩行は全例原則的に可能である。上肢による日常生活動作(Activities of Daily Living,A. D. L.)にもほとんど問題はない。しかし片麻痺とちがつて,対麻痺では歩行とA. D. L. の独立だけでは問題が終わらない。褥創の予防(skin care)と膀胱障害対策とが最初から社会復帰後まで一生を通じて必要となるのである。
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