特集 心臓血管外科 後編
術後合併症
【コラム】オピオイドは脊髄虚血を誘発するか—麻薬誘発性対麻痺は従来の脊髄障害とは何が異なるのか
清水 淳
1
Jun SHIMIZU
1
1榊原記念病院 麻酔科
pp.190-192
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200253
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胸腹部大動脈置換術後のオピオイドによる影響に関しては,モルヒネ投与によって対麻痺が発症した症例をWisconsin大学のAcherら1〜3)が経験し,その後,低用量のナロキソン持続投与(1μg/kg/hr)によって対麻痺の発生率が低下することを継続的に報告している。
本コラムでは,周術期のオピオイド投与が脊髄虚血を誘発するのか,そうであるならばどのような機序を介しているのかについて解説する。
Summary
●胸腹部大動脈置換術後など,脊髄に短時間の虚血が生じたあとにオピオイドを使用すると,対麻痺を発症することがあり,この機序にはグルタミン酸-NMDA受容体系の関与が示唆されている。
●実験モデルでは,オピオイドによる脊髄虚血の誘発は,全身麻酔下に臨床使用量の2倍量までであれば発症しないとされている。
●外傷性の脊髄損傷では,オピオイドを急性期に使用すると運動機能改善の低下,神経因性疼痛の増悪が起こり,この機序にもNMDA受容体が関与することが示されている。
●麻薬誘発性対麻痺は,κ受容体作動薬では起こらないとされているが,外傷性,虚血性脊髄障害ではκ受容体作動薬が内因性オピオイドによる増悪機序に関与するとされている。
●麻薬誘発性対麻痺は特定の条件がそろった場合に発症する可能性があり,臨床使用に際しては配慮が必要である。
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