神経疾患リハビリテーションの実際・III
対麻痺(2),四肢麻痺,失調症
上田 敏
1,2
1東大・中尾内科
2東大中央診療部運動療法室
pp.1563-1565
発行日 1965年10月10日
Published Date 1965/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201037
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
対麻痺(2)
起立から歩行へ 前号でのべた車椅子上生活への習熟と並行して起立,歩行の練習をはじめる。また初期から始められた上肢のP. R. E.,下肢のR. O. M. 維持練習はこれらの時期にも継続される。push-upには上肢強化の意味も大きく,装具着用はR. 0. M. 維持をたすける。
起立;長期臥床した対麻痺では起立性低血圧が起こりやすい。また腹筋,肋間筋麻痺があれば立位で横隔膜が引下げられ,呼吸困難をおこすことがある。しかし一方立位には 1)下肢伸展反射の促進,2)下肢骨の脱石灰化の予防,3)尿路のうつ滞の防止,感染予防,4)褥創の治癒促進,5)心理的効果,ひいては全身状態の改善などいろいろ良い効果がある。副作用を押さえつつ起立の効果を発揮させるには片麻痺と同様傾斜台(tilt table)がもつともよい。最初30°,5分程度からはじめ反応を見ながら毎日少しずつ増して,直立位(80°),30分までもつていく。低血圧,下肢チアノーゼが強い場合,両下肢を弾力包帯で巻いたり,呼吸困難には腹帯,軟性コルセットで腹部,とくに下部をしめる必要があることもある。多くの場合は次第にこれらは不要になる。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.