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はじめに
脊髄損傷対麻痺の歩行訓練1)は,歩行がADLに結びつくのを理想とするが,車埼子での移動エリアの拡大,装具・杖歩行が大きなエネルギーを必要とすることによる疲労,社会環境の変化,自動車社会の拡大などの要因により,ADLに結びつかない歩行訓練の意義2~5)が問いなおされている.
当院においては,社会復帰後歩行するかどうかにかかわらず脊髄損傷対麻痺には原則として歩行訓練を処方してきた.しかし従来の調査で40%程度は退院後も歩行していたが,今回の調査では13%に減少しており,他の報告6)でも最近の報告ほど入院時歩行訓練したもので,退院後歩行するものの割合いが減少しており,下肢装具使用率の低下を知る.
一般に対麻痺の歩行訓練の意義は,①骨萎縮・褥創・拘縮・腎結石など各種合併症の予防,②心肺循環機能の維持改善,膀胱直腸障害に対する好影響,③スポーツ・レクリエーションとして,④たとえ一歩でも歩くことはADLに役立つとする移動の面,⑤精神的自立,歩行に対するあきらめの両面がある心理的意義などである.しかし社会復帰した多くの対麻痺者は歩行しておらず,外来診察時歩行していないことによる合併症を経験することは少なく,ADLに結びつかない歩行訓練を行っても社会復帰後歩行しないのだから,対麻痺の歩行訓練は,入院期間も長くなり時間と医療費の無駄であるとする意見もある.私信によれば,Stoke Mandeville Hospital(英),Heidelberg大学(独),Royal Perth Hospital(豪),Rancho Los Amigos Hospital(米)の各脊髄損傷センターでは,従来全例に行っていた歩行訓練を必ずしも全例に行っておらず,損傷レベル7,8)によりnoneambulatory,exercise ambulatory,household ambulaory,community ambulatoryに分類し,職業・年齢・意欲などを考慮し,本人をまじえたリハビリテーションカンファレンスにより,歩行訓練を行うかどうか決定している.
本稿では当院での対麻痺の歩行訓練,下肢装具の変遷,リハ処方する側の歩行訓練の処方・意義・実用歩行・装具のアンケー卜,対麻痺者の歩行訓練の意見,現在の当院での歩行訓練に対する考え方を述べるとともに,文献的考察をくわえて報告する.
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