- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
造血幹細胞移植患者がICUに入室する直接的な原因として最も多いのは,呼吸不全である。そこで,同種造血幹細胞移植後の肺合併症について,移植後の時期で分けて,それぞれ感染性肺合併症,非感染性肺合併症の診断アプローチと治療介入について解説する。
Summary
●造血幹細胞移植患者がICU入室に至る直接的な原因として最も多いのは,肺合併症(呼吸不全)である。
●基礎疾患,合併症などの患者背景,移植前処置を含む治療歴,移植後の造血機能回復の有無,発症時期,併用薬物,移植片対宿主病の発症の有無などにより,移植後の肺合併症の発症形式は異なり,多様な病態を呈する。
●同種移植後から100日までの生着前期・後期には「感染性」肺合併症の頻度が高く,移植後100日以降の晩期においては,慢性移植片対宿主病関連「非感染性」肺合併症の発症が多い。非感染性肺合併症の治療は,複合免疫抑制療法が主体となるが,概して治療に難渋することが多く,予後不良である。
●造血幹細胞移植後の呼吸不全に対し,人工呼吸器管理を要する症例は有意に予後不良である。ICU入室を要した造血幹細胞移植症例の解析において,2臓器以上の臓器不全を有し,96時間以上の人工呼吸器管理を要した症例では予後不良であることが報告されており,早期から適切な治療介入を行うことが重要である。
●最近では,非感染性肺合併症の一病型である特発性肺炎症候群(IPS)に対して,tumor necrosis factor(TNF)-α阻害薬であるエタネルセプト(我が国では保険適用外)やECMO導入の有用性を論じる報告がある。また,重症の呼吸不全症例に対する肺移植の有用性が注目されている。これらの新規治療,集学的治療の適応は十分に確立されておらず,今後さらなる検討を要する。
Copyright © 2015, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.