特集 ICUで遭遇する血液疾患
Part 2 血液内科のクリティカルシンドローム
4.造血幹細胞移植に伴う重症合併症(感染症を除く)
4-4.造血幹細胞移植に伴う類洞閉塞症候群/肝中心静脈閉塞症—深刻な合併症であり,予防法・治療法の確立が求められる
藥師神 公和
1
Kimikazu YAKUSHIJIN
1
1神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科
pp.405-411
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200173
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造血幹細胞移植前治療(前処置)として用いられる放射線療法や化学療法による,肝内細静脈や類洞の内皮細胞障害に由来する「類洞閉塞症候群sinusoidal obstruction syndrome(SOS)」は致死的合併症の1つである。以前は「肝中心静脈閉塞症veno-occlusive disease(VOD)」と呼ばれていたが,肝中心静脈の血栓性閉塞は発症に必須ではないため,SOSという名前が提唱された1)。
SOS/VODは,右季肋部痛,肝腫大,黄疸,腹水,原因不明の体重増加などが主な症状であり,循環障害性肝障害をきたす疾患である。特に造血幹細胞移植後の合併症として知られているが,カリキアマイシン結合抗CD33モノクローナル抗体であるゲムツズマブオゾガマイシンgemtuzumab ozogamicin(GO)2)や,白金製剤であるオキサリプラチン3)でも発症することがある。本稿では,造血幹細胞移植におけるSOS/VODについて述べる。
Summary
●類洞閉塞症候群/肝中心静脈閉塞症(SOS/VOD)は,造血幹細胞移植後早期に発症する致死的合併症の1つである。
●ヨーロッパで承認されたdefibrotide以外,有効な予防法・治療法は確立されていないが,2014年現在,日本では承認されていない。
●水分バランス,電解質補整などを含め,全身管理が必要であり,集中治療医と血液内科医のみならず,他のメディカルスタッフとの連携も重要である。
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