特集 ICUにおける神経内科
Part 1 神経症候に対する診断と治療アプローチ
3. 呼吸管理—神経筋疾患における呼吸管理のエビデンス
鈴木 健人
1
,
武居 哲洋
1
Taketo SUZUKI
1
,
Tetsuhiro TAKEI
1
1横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部
pp.769-777
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200319
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ICUで遭遇する急性発症の神経筋疾患による呼吸不全は,先進国では大多数がGuillain-Barré症候群(GBS),および重症筋無力症myasthenia gravis(MG)である1)とされる。そのため,過去の神経筋疾患患者の急性呼吸不全に関する研究の多くは,GBSやMGを対象としており,本稿の解説もこれらの文献を基にしている。
GBSやMGにおける急性呼吸不全において,これまでに検討されてきた初期の人工呼吸器管理,長期人工呼吸の予測,気管切開や人工呼吸器離脱のタイミング,抜管成功の予測因子,リハビリテーションなどについてレビューした。いずれのClinical Questionに対しても,ほとんど小規模の観察研究が存在するのみであり,エビデンスレベルが決して高くないことをご理解いただきたい。
Summary
●人工呼吸を要する急性発症の神経筋疾患の多くは,GBSとMGである。
●呼吸管理の重要な目標は呼吸筋の安静と肺の拡張であり,呼吸管理中の肺合併症は転帰を悪化させる可能性がある。
●GBSは2週間以上の人工呼吸を要することが多く,早期気管切開は許容されると考えられるが,MGは2週間以上の人工呼吸を要するのは半数以下であり,症例を適切に選択して気管切開を施行するほうがよさそうである。
●人工呼吸器離脱や抜管には呼吸筋筋力や球麻痺の評価が必要であり,通常の離脱基準や方法が適応しない可能性がある。GBSに関しては,肺活量や最大吸気圧が有用な指標とされるが,MGは病勢に変動が大きいため予測困難である。
●呼吸不全の急性期に積極的なリハビリテーションを行うべきかどうかは,今後の検討を要する課題である。
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