特集 AKI
4.AKIの診断・検査:その常識にチャレンジする
(1)病歴と身体所見―病歴聴取のポイントと原因特定につながる重要な身体所見
谷澤 雅彦
1
,
柴垣 有吾
1
Masahiko YAZAWA
1
,
Yugo SHIBAGAKI
1
1聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科
pp.483-492
発行日 2009年7月1日
Published Date 2009/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100222
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すべての疾患に通じることだが,正確な病歴の聴取や身体所見の観察が診断のヒントとなり,診断に直接結びつくことが多い。実際,病歴聴取のみで正診率は50~80%に及ぶといわれている。急性腎傷害(AKI)の診断においても,病歴や身体所見が重要であることは言うまでもない。本章では,AKIの診断のための病歴聴取のポイントや,身体所見が与えてくれる情報について説明する。
AKIの鑑別診断を行っていくうえで,AKIの病因の部位を解剖学的に,腎前性,腎性,腎後性として分類すると考えを整理しやすく,病歴や身体所見を考慮するのに役立つ。腎前性とは腎血行動態の異常(低血圧,循環血液量減少,腎血管のトーヌスの異常など)により腎臓の機能的異常が生じるもの,腎性は糸球体,尿細管間質,腎血管の障害により腎実質の構造的な異常が生じるもの,腎後性は腎盂尿管・膀胱・尿道の障害により腎臓の機能的あるいは構造的異常を生じるもの,とする分類である。
実際のところ,AKIの病態はこの分類には当てはめにくいものもある。特に腎前性と腎性の区別は非常に微妙である。しかし,この分類の利点は,原因から障害部位を推定でき,臨床所見や検査所見が予想可能であることである。逆に臨床所見や検査所見から障害部位が推定でき,原因特定に結びつくこともある(図1)1)。このような理由から,本章ではこの分類に基づいて話を進める。
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