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さて,困った。重症急性膵炎severe acute pancreatitis(SAP)に対する持続的腎代替療法continuous renal replacement therapy(CRRT)に関する質の高いエビデンスはほとんどない。ない,というのがエビデンスである。欧米の診療ガイドライン1~3)において,さかんに論議されているさまざまな治療法のなかで,CRRTについては推奨どころか項目さえも見当たらない。もちろん,本邦においても,これを支持する無作為化比較試験(RCT)の報告はない。つまり,特集を組むまでもなく,SAPに対するCRRTにはconsがいっぱいなのである。一方,本邦では健康保険診療上,持続緩徐式血液濾過術として認可されており,2002年の厚生労働省の報告4)では,集計された409例のSAPのうち,85例(21%)にCHF/CHDF*1が施行されていた。「それがそもそも世界の標準と合わないって!」そんな声が聞こえてきそうである。
そのような環境下で私に割り当てられた命題は,SAPにおけるCRRT(non-renal indication)のprosである。言い換えれば,SAPの初期治療において,CRRTによりサイトカインを除去することが可能であり,それが臨床経過に反映されるというエビデンスを提示しなさい,ということなのだろう。だが,それはかなり難しい。なぜなら,SAPに対するCRRTの有効性は厳密な体液管理の容易性に負うところが大きく,臨床的にはサイトカインの除去効果と体液管理による効果を切り離すことが難しいからである。
そこで,まずは“non-renal”,“renal”の範疇を超え,目の前のSAPの病状をCRRTで好転させるためには,いつ,どのような条件で開始すべきなのか,本当にそれが可能かどうか,現在の数少ないエビデンスとエクスペリエンスから考察してみることにする。
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