特集 急性膵炎
2.抗菌薬(予防的投与)に関するpro/con―(1)pro:重症化を想定したなら予防的投与を
阪上 順一
1
Junichi SAKAGAMI
1
1京都府立医科大学 消化器内科
pp.607-615
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100088
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急性膵炎の早期死亡(発症2週間以内)は主に循環不全に伴う臓器不全が原因であり,急性膵炎の後期死亡(発症2週間以降)は主に感染性合併症,特に感染性膵壊死が原因とされる。我が国の重症急性膵炎の致命率(図1)は2003年までは急激に低下してきている。
現在,我が国における急性膵炎死亡の70%は感染関連死亡とされ,これは海外論文1)で報告されている頻度とほぼ同レベルである。2007年の我が国の急性膵炎推定受療患者数は57560人であり,急性膵炎全体での致命率は1.9%2)であることから計算すると,年間約800人が急性膵炎後に感染関連死亡していると概算できる。
急性膵炎における感染の32~57%は複数菌による感染(polymicrobial infection)であり3~6),特に重症急性膵炎の膵外感染では半数以上に複数菌が検出される7),と報告されており,本疾患における感染制御の困難さを物語っている。
本稿では,急性膵炎の致命率を低減させる手段として,予防的抗菌薬投与が有効である可能性について述べる。
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