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蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法continuous regional arterial infusion of protease inhibitor and antibiotic(CRAI)は,1989年以降,東北大学の武田ら1,2)によって論文報告がなされ,重症急性膵炎における治療法として広く認知されるようになった。この治療法の鍵は,経動脈的に高濃度の蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬を,膵臓の炎症部位・壊死組織部位に直接到達させることにあり,膵局所の炎症鎮静化,壊死組織における感染対策という点で,極めて理論的な治療方法である。
1990年の段階で,角川ら2)の実験的検討では,急性膵炎での蛋白分解酵素阻害薬の膵組織内濃度は,同量を点滴静注にて投与した場合に比べて,5倍の高値が得られている。また,抗菌薬の動注療法については,Hayashiら3)による1996年の報告では,イヌの膵炎モデルを用いて検討し,抗菌薬を動注した場合には静注と比べて5~12倍の濃度が得られたと報告している。武田ら4)は,こうした結果もふまえて,動注療法は急性膵炎において,drug delivery systemとして極めて有用であると論じている。
ただし,蛋白分解酵素阻害薬が,実際に膵炎を鎮静化できるのか,壊死組織に至っては血流が途絶していることなども予想され,経動脈的に投与したとして,薬物がどの程度組織移行するのかなど,まだまだ臨床的な疑問が残っている。また,重症急性膵炎に対するCRAIという治療法が,救命や予後改善にどの程度寄与しているのかも,意見が分かれるところである。
今回は,conの立場からCRAIを考えてみる。
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