徹底分析シリーズ 古くて新しい 炎症
脳内神経炎症と術後認知機能異常—免疫反応は脳内でも起きている!
河野 崇
1
Takashi KAWANO
1
1高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座
pp.842-847
発行日 2020年8月1日
Published Date 2020/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201746
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平均寿命の伸延および高齢者人口の増加に伴い,高齢者が手術を受ける機会は世界的に増加している。日本のレセプト情報・特定健診等情報データベース(2017年度)では,全身麻酔件数に65歳以上の高齢者が占める割合はすでに半数を超えている。周術期管理などの進歩により,外科手術の限界年齢も上昇しているようだ。しかし,高齢者の耐術能は個人差が大きく,暦年齢で判断することはできない。さらに,後期高齢者は,術後余命の長さではなく,日常生活動作(ADL)の向上をより重視すべきである。心肺機能が正常なら手術可能,とはならないのである。その中で,術後認知機能異常は,高齢者の長期的なADL低下と関連する重要な術後合併症として広く認識されつつある。術後認知機能異常の病態は複雑で不明な点も多いが,近年,脳内神経炎症neuroinflammationの役割が注目されている。
本稿では,脳内神経炎症仮説を中心に術後認知機能異常について概説する。
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