Japanese
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特集 グリオーマの生物学
グリオーマと脳内免疫
Glioma and Intracerebral Immunity
清水 惠司
1
Keiji Shimizu
1
1大阪大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Osaka University Medical School
キーワード:
glioma
,
cytokine
,
astrocyte
,
microglia
,
blood brain-barrier(BBB)
,
major histocompatibility complex(MHC)
Keyword:
glioma
,
cytokine
,
astrocyte
,
microglia
,
blood brain-barrier(BBB)
,
major histocompatibility complex(MHC)
pp.239-250
発行日 1997年3月1日
Published Date 1997/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901078
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I.はじめに
脳腫瘍には10万人につき40-50人程度罹患しており,平均して年間10人が死亡すると言われている1)。しかし,脳腫瘍と一口にいってもグリオーマのように神経上皮性に発生する悪性腫瘍から,髄膜腫や下垂体腺腫のように髄膜組織や下垂体などの神経上皮以外から発生する良性腫瘍まで非常に多岐にわたっている2)。その中で,脳腫瘍の約1/3を占めるグリオーマは,脳実質内で浸潤性に増殖するため,腫瘍辺縁部が不規則不鮮明となり,時には隣接した脳葉まで伸展していることがある。そして,脳腫瘍が増大するにつれ周辺脳組織の器質的あるいは機能的損傷による巣症状や,機能的刺激症状としてのけいれんが生じたりする。このように麻痺,言語障害,知覚障害等の臨床症状を伴ったグリオーマは,術後にこれらの神経症状を悪化させないためには,はじめから腫瘍を全摘出することを諦めなければならない。特に悪性グリオーマに対する手術,放射線および化学療法などの集学的治療成績は非常に惨憺たるものである3,4)。
一方脳実質は,周知の如く1)リンパ系組織が無く,2)血液脳関門という特殊構造を有するため5),血管内の各種免疫関連細胞が容易に脳内に浸潤しえない,そして,3)脳実質細胞には主要組織適合抗原複合体(MHC)の表現が非常に低いことから,古くから免疫学的特殊部位(immunologically privileged site)と言われてきた6)。
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