徹底分析シリーズ 安全な麻酔のためのモニター指針
意識のチェック―術中覚醒記憶の予防:血行動態変化やBISだけでは不確実
坪川 恒久
1
Tsunehisa TSUBOKAWA
1
1金沢大学医薬保健研究域 麻酔・蘇生学
pp.356-362
発行日 2013年4月1日
Published Date 2013/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101798
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私たちが麻酔をしている患者の一部は,実は術中に覚醒している可能性がある。麻酔薬による健忘作用がsafety netの役割を果たしているが,このsafety netがうまく機能しなかったとき,術中覚醒記憶を起こすことになる。
では,術中覚醒記憶が生じると,どのような不利益があるのであろう。術中覚醒記憶をもつ人の60%以上には,不眠,悪夢,外傷後ストレス障害(PTSD)など,さまざまな精神的後遺症が起きることが報告されている1)。このような精神的後遺症は,社会生活を著しく困難にする。さらに,そのような経験をした患者は,手術・麻酔を回避する傾向があり,悪性腫瘍をもつ患者では,命にもかかわる問題となる。何といっても患者は,麻酔科医に対して「手術中は完全に眠らせてくれるもの」と信じて身を委ねる。術中覚醒記憶を起こすことは,この信頼を裏切ることになる。
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