徹底分析シリーズ 術中覚醒記憶
術中覚醒記憶予防のための麻酔法
西川 光一
1
Koichi NISHIKAWA
1
1群馬大学大学院医学系研究科 麻酔神経科学講座
pp.1022-1024
発行日 2009年11月1日
Published Date 2009/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100785
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あなたが全身麻酔を受ける患者になったと仮定して,手術中,まったく身体を動かせない状態で,意識も痛みもあると想像したらどうだろうか。体験した患者曰く,まさに「生き埋め」に近い苦しみである1)。しかも,その記憶が術後も長く残るとしたら…。全身麻酔では,意識が消失し(鎮静),痛みがない(鎮痛)だけでなく,麻酔中のエピソード記憶が残らないこと(健忘),が求められる。そのためには,麻酔薬によって脳が広範囲に,適度に,可逆的に抑制される必要がある(図1)。術中覚醒の頻度は0.5%以下とされているが〔前項「術中覚醒記憶とは何か?」のアンケート結果を参照〕,すべての麻酔患者で術後インタビューが詳細に行われているわけではないことを考慮すると,実際の発生頻度はさらに高いと思われる。
本稿では,術中に覚醒した結果術後にエピソード記憶が残存してしまうこと(術中覚醒記憶)を問題とし,予防のための基礎知識と臨床的工夫を紹介する。したがって,麻酔薬による潜在記憶抑制に関する問題は本稿では取り上げない。
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