症例検討 不整脈
巻頭言
稲田 英一
pp.591
発行日 2008年6月1日
Published Date 2008/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100112
- 販売していません
- 文献概要
周術期管理において不整脈の診断と治療は重要な領域である。高齢者手術が増加し,心房細動や心室性期外収縮などの不整脈を持つ患者管理を行う機会が増加してきたことのほか,周術期には不整脈の発現頻度が高いこと,不整脈は心筋虚血など心臓の異常だけでなく,呼吸器系の異常など多臓器の異常のサインであること,不整脈はしばしば重篤な血行動態異常を起こすだけでなく,ときには致死的となりうるものがあること,などがその理由である。
不整脈が起きた場合には迅速な治療が要求される。原因治療に加え,抗不整脈薬治療が必要となることもしばしばある。適切な抗不整脈薬の選択と投与が要求される。循環抑制などの抗不整脈薬の副作用や,抗不整脈薬の相互作用にも注意する必要がある。Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群患者の心房細動のように誤った抗不整脈薬治療により,心室細動などより重篤な不整脈を起こしうる場合もある。抗不整脈薬投与のほか,カルディオバージョンやオーバードライブペーシングなどの電気的治療が必要となる場合がある。
今回は,高血圧患者やWPW症候群患者における術中の心房細動,冠動脈疾患のリスクを持つ患者における腹部外科手術中の心室期外収縮の頻発,心拍動下冠動脈バイパス中の心室頻拍について症例検討を行うこととした。不整脈患者や重篤な不整脈を起こす可能性のある患者の術前評価や管理,術中不整脈の診断と原因検索,抗不整脈薬治療や電気的治療などについてまとめておくことをお勧めする。
Copyright © 2008, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.