徹底分析シリーズ 3.11から学ぶ
巻頭言
稲田 英一
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.209
発行日 2012年3月1日
Published Date 2012/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101466
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- 文献概要
2011年3月11日2時46分,皆さんはどこで,何をしていただろうか。揺れ動く病院の中で,心のどこかで自分の家族や愛する人のことを案じながら,患者のために必死で活動していた人も多いだろう。東日本大震災とその後の状況は,私たちの人生観を,そして世界観を変えるようなインパクトをもっていた。いまだに行方不明の人々への思い,原発事故による放射能への不安,失業を含めた劣悪な生活環境など,3.11の波及効果は計り知れない。家族や親しい人々を失った悲しみ,思い出の品を失った悲しみ,住む家や故郷を失った悲しみや苦しみにあえぐ人々が数多くいる。
本徹底分析では,被災者の立場や,被災地の真っただ中で診療した医師の立場,現地での医療支援をした医師の立場,後方支援をした医師の立場などから,多角的にこの大震災について考えてみることにした。
家族を失った麻酔科医の手記や,Japan Medical Association Team(JMAT)や福島医科大学被曝医療班の活動,災害時の「こころのケア」への対応などに関する稿が含まれている。また,岩手医科大学附属病院や,石巻赤十字病院,東北大学病院,福島県立医科大学附属病院などにおける帝王切開の状況など,当時の被災地の医療事情について述べられている。そして,後方支援態勢や,災害に備えた日頃の準備や訓練,事業継続計画(BCP)について,今後へ向けて考察している。
いまだに解決されていない問題は何か,私たちが日頃からなすべきことは何かを,医療者として,また一人の人間として,今一度考える機会になればと願っている。
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