症例検討 不整脈
巻頭言
稲田 英一
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.37
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200098
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- 文献概要
周術期に不整脈を認める頻度は高い。心臓手術,肺手術などでは100%の頻度で不整脈を認める。一般にリスクが低い術式であっても,洞性徐脈,洞性頻脈を含めれば不整脈の発生率は50〜80%にも上る。高齢患者が増加した現在,術前から不整脈をもっている患者に遭遇することも多い。心房細動では,対する調律や心拍数調節のほか,抗凝固療法にも注意する必要がある。
周術期にみられる多くの不整脈は,経過観察のみで特別な治療を必要としない。しかし,わずかな頻度で緊急の治療を要する場合がある。高度の徐脈や頻脈,不整脈による高度の血圧低下,心筋虚血などのほか,心室頻拍,心室細動など,致死的なより重篤な不整脈に移行する場合などである。不整脈を起こしやすいWolff-Parkinson-White症候群や,Brugada症候群などは要注意である。不整脈を認めた場合,原因診断が基本であるが,不整脈そのものを積極的に治療しないかぎり,不整脈が治まらない場合もある。さまざまなガイドラインに従って抗不整脈薬が投与されるが,それを使用する人の経験によるところも多い。使用している麻酔法や麻酔薬との相互作用も考慮する必要がある。抗不整脈薬の「手応え」のようなものを身につけておきたい。抗不整脈薬自体の心抑制作用,血圧低下作用,催不整脈作用などにも注意が必要である。
本症例検討では,さまざまな不整脈を例に,実際的な抗不整脈薬の投与についてまとめた。読者それぞれが,こうした状況では,自分ならどう治療するかを考えながら読み進めていただきたい。
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