症例検討 まれだが怖い 手術・麻酔合併症
巻頭言
稲田 英一
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.697
発行日 2016年8月1日
Published Date 2016/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200625
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- 文献概要
ほとんどの手術や麻酔は,術中に血圧や心拍数が多少変動したり酸素飽和度がわずかに低下したりするだけで,問題なく終わる。しかし時には,的確に早期診断を行い,迅速な処置を行わなければ死に至るような合併症も起こる。幸か不幸か,そのような合併症を経験することが少ないために,目の前で急激な血圧低下が起きたり,重症の不整脈が起きたり,高度の低酸素血症が起きた場合に十分な鑑別診断もできず,迅速で的確な処置もできない可能性がある。通常の血行動態治療や低酸素症や高二酸化炭素症に対する処置を行えば問題がない場合もあるが,まれに,通常の治療だけでは致死的な結果になる場合もある。
今回はそのような,起こるのはまれだが対応を誤れば致死的にもなる手術・麻酔合併症を取り上げた。提示症例のもとは私自身の経験したものである。そのような危機的な状況の中で学んだことを読者には誌面で学び,いざというときに備えていただきたい。まずは症例提示を読み,鑑別診断や鑑別に至る道を考え,それから本文を読んでいただきたいと思う。
今回の症例検討はいわば謎解きである。ミステリーでは,犯人を明かさないのが掟である。是非,犯人を突き止め,患者の命を救っていただきたい。
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