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あとがき
下畑 享良
pp.1262
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770111262
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特集「シャルコーを讃えて Hommage à Charcot」をお届けしました。2025年7月,私は忘れられない経験をしました。パリ・サルペトリエール病院で開催されたジャン=マルタン・シャルコー生誕200年記念式典に参加したことです。会場のParis Brain Instituteには世界各国から研究者が集い,歴史ツアーと学術講演が行われました。歴史ツアーではシャルコーゆかりの建造物や図書館,博物館を巡り,彼の足跡をたどりました。講演では,神経学への貢献,芸術家としての活動,教育者としての姿勢などが取り上げられましたが,とりわけ教育者として多数の弟子を育て,フランスのみならず世界各国へ大きな影響を及ぼしたことを実感しました。シャルコーが多くの優れた弟子を育て得たのは,臨床家,芸術家,教育者として卓越していただけでなく,人間的な魅力にも溢れていたためだと理解しました。
そのシャルコーの薫陶を受けた一人が,日本からの留学生,三浦謹之助でした。私は式典において,二人の師弟関係について講演しました。三浦がパリに滞在したのは8カ月に満たない短期間でしたが,彼は生涯にわたりシャルコーを師と仰ぎ続けました。三浦は,火曜講義に臨むまでに患者を少なくとも2週間診察し徹底的に準備した姿勢に強い感銘を受け,シャルコーを「観察と経験を重ねる臨床家であると同時に,多くの論文を著す臨床家」と評しました。また,厳格な外見に反して温厚で,誰に対しても親切であった人柄も,彼を涙ながらに回想させるほど印象的でした。

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