--------------------
あとがき
下畑 享良
pp.792
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202419
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今月は自己抗体の最新情報がテーマです。代表的疾患の1つである自己免疫性脳炎は,近年,増加の一途をたどっています。PubMedにてキーワード検索すると,10年ほど前までは稀であったものが,2012年頃より急激に増加し,その増加傾向は近年ますます顕著となっています。その主な理由としては,培養細胞を用いたcell-based assay(CBA)が導入され,細胞表面抗原を認識する自己抗体を検出することができるようになったことが挙げられます。そして今後,さらに多くの自己抗体が発見されるものと推測されます。ちょうど私が大学院生であった頃,神経変性疾患の原因遺伝子が次々と明らかにされ,非常に興奮した時期を彷彿とさせます。これからの脳神経内科診療は,CBAにより多くの自己抗体が確認でき,また全ゲノム解析により原因遺伝子が確認できる時代に突入することになるわけです。
ではこのような時代の診療に大切なものは何でしょうか? 昨年9月,マドリードで開催されたパーキンソン病・運動障害疾患コングレスにて,Stanley Fahn Lectureship Awardを受賞されたK. Bhatia教授(Queen Square, London)による講演は示唆に富むものでした。講演タイトルは「Is the Clinical Phenomenologist Obsolete?(神経症候学を大切にする臨床家は時代遅れか?)」というものでした。Bhatia教授による答えはNoであり,むしろ神経症候学の役割は益々重要になるという主旨でした。
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.