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あとがき
下畑 享良
pp.832
発行日 2022年6月1日
Published Date 2022/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202132
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特集「脳神経内科医に求められる移行医療」を企画させていただいた。移行医療は重要な課題ながら,脳神経内科医の中ではまだ十分な議論ができておらず,残念に思っていた。かくいう私も数年前に2つの出来事を経験するまで,移行医療を実現する大切さを理解していなかった。1つは地域のてんかん研究会で,小児科医から,小児期に発症し成人後も小児科で治療を継続する,いわゆるキャリーオーバーの問題に取り組むべきという発表があり,その重要性を教えていただいたことである。発表後,小児科医から活発な意見があったのに対し,脳神経内科医からはほとんど意見がなく,対照的であった。岐阜大学小児科深尾敏幸前教授より「患者さんの希望を叶えるため,まず私たちが連携を深めましょう」と声をかけていただいた。深尾教授は残念なことにその後,急逝されたが,てんかんの移行医療の実現は,託された宿題のように感じている。
もう1つの出来事は,重症心身障害児や小児神経難病の患者さんが多数入院する病院を毎週回診する機会をいただき,脳性麻痺は定義上,非進行性の疾患のはずなのに,実はさまざまな進行性の変化を認めることを理解したことである。成人脳性麻痺では健常者と比較して,脳卒中のハザード比は2倍,脊髄症に至っては8倍,さらに認知症,てんかん,睡眠障害,精神疾患の頻度も高い(Smith SE, et al. Ann Neurol 2021; 89: 860-871)。その機序は不明であるものの,成人の脳性麻痺患者さんの診療に成人科医師による治療やケアが不可欠であることを痛感した。
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