特集 発達障害への多様な支援~あれが知りたい・これも知りたい~
最近のトピックス
発達障害におけるトラウマインフォームドケア
野坂 祐子
1
NOSAKA Sachiko
1
1大阪大学大学院人間科学研究科
pp.1108-1111
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000270
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はじめに
発達障害のある子どもはトラウマを体験しやすいが,それによる影響は,生得的な特性なのかトラウマによる反応なのか,鑑別が非常に難しい1,2)。注意欠如・多動症(ADHD)による落ち着きのなさとトラウマの恐怖から生じる集中困難は一見すると類似しており,トラウマの影響が見過ごされたまま,発達障害による言動とみなされることが少なくない。トラウマのリマインダーによる反応ならば,トラウマ記憶を想起させるリマインダーを同定し,子どもが安心感を取り戻すための対処スキルを身につけることが有効である。しかし,落ち着きのなさを「問題行動」とみなして叱責したり,本人の「特性」と捉えたりするだけでは,子どもの不安はかえって高まる。とはいえ,自閉スペクトラム症(ASD)の子どものように,独特な感覚や捉え方がリマインダーになっていると,トラウマの影響を探るのは容易ではない。
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