特集 精神療法における治癒とは
認知行動療法におけるリカバリー
片山 奈理子
1
,
藤澤 大介
1
1慶應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室
pp.677-681
発行日 2024年10月5日
Published Date 2024/10/5
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はじめに
精神障害に罹患している患者は世界では約9億人以上,約8人に1人といわれている(WHO, 2022)。精神疾患に対する精神療法の一つとして,認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy : CBT)がある。CBTは認知(ものの受け取り方や考え方)に働きかけて気持ちを楽にする精神療法の一つである。自身の思考や行動パターンをモニタリングし変容を促すことにより,さまざまな精神的な問題解決を目指す。さまざまな精神障害に対するCBTの有効性は,多くのエビデンスが蓄積され,CBTは各国の治療ガイドラインでも推奨されている(NICE, 2022)。近年のCBTは「パーソナルリカバリー」という概念と結びつけられることが増えている。パーソナルリカバリーとは,単に症状の軽減を目指すだけでなく,個人が自分らしく生活を送る能力の回復を指す。本稿では,従来の精神医学とポジティブ精神医学の流れ,それを受けて近年提唱された「リカバリーを目指す認知療法」の紹介と,最新のCBTの発展について説明し,CBTにおけるリカバリーを考察する。

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