連載 BOOKS
―「DVDブック 医療職のための包括的暴力防止プログラム」包括的暴力防止プログラム認定委員会/編―「気をつけてね」で済ませない職場環境を築くために
村中 峯子
1
1(社)全国保健センター連合会
pp.786
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100193
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看護学生のときだった。男性入院患者に突然,胸を触られたことがある。反射的に,私は彼の左頬にヘビー級の平手打ちをお返ししてしまった。自己嫌悪と後悔で目の前が真っ暗になった。そんな私を婦長さんが慰めてくれた。「平手打ち,強烈だったんだって?後は私が対応するから,大丈夫よ」。堪えていた涙がどっと溢れた。とっさのとき,看護職として,何を大事に行動するのか,のちのちも自分なりに考え続けるきっかけになった。
もしもあのとき,「我慢すべき」「隙があった」と,あるべき論で叱責されただけなら,私には本書を手に取る意欲も,酩酊している男性が大暴れしている家庭や,攻撃性の高まった統合失調症の家庭に,援助者として訪れ続ける覚悟は生まれなかったと思う。適切にアフターケアされない暴力は,した側にもされた側にも,さまざまな形で後を引くものだろう。
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