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はじめに
緩和ケアは,患者の苦痛からの解放とかけがえのない尊い存在としての日々を支えることを目指している。したがって,苦痛・苦悩を和らげるための専門知識や技を伝える緩和ケア教育は,看護師が質の高い緩和ケアを行なううえで必要不可欠なものである。しかし,緩和ケアに従事する看護師に必要とされる教育カリキュラムはいくつか作成されているものの,全国的な活用には至っていないのが現状である。
静岡がんセンター(以下,当院)の看護部門では,専門職業人として,自ら学び,自らを高めることを教育の基本方針としている。看護師の継続教育としては,がん看護の基礎知識を習得するための基礎教育と,専門性の高い知識と技術を発揮する看護師を育成するための専門教育がある。
基礎教育における緩和ケア教育は,がん性疼痛をもつ患者をケアするための基礎的な知識,技術,態度について習得することを目標としている。この基礎教育を修了した看護師は,自己能力向上のための専門教育を選択して受講することができ,緩和ケア領域では,がん性疼痛緩和の初級コースと中級コースがある。この専門教育は,専門性の高い緩和ケアの知識と技術が発揮できることを目標としているが,緩和ケア領域の認定看護師を目指す者を輩出するなど,看護師のキャリアアップに関する意欲を高めることも目的としている。
また,当院は静岡県の都道府県がん診療連携拠点病院でもあり,県内全体のがん看護の質を向上させることも大きな役割である。2006(平成18)年度より厚生労働省の委託事業である「がん医療における質の高い看護師育成研修」を静岡県と共催で開始しており,そのなかで院外の看護師に対する緩和ケア教育も行なっている。
本稿では,当院での看護師人材育成のための,院内および院外における緩和ケア教育の実際と今後の課題について述べる。
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