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はじめに
「看護職は,なぜ職場を離れるのだろう」。この疑問から,筆者は,関東の3施設と関西の1施設の病院に勤務する976名の看護職を対象に「組織コミットメント」について調査を行なった。その結果,対象者は看護を「主体的な仕事」であり,「看護が全て」と捉えているにもかかわらず,就業年数4年未満の看護職が,看護職を「辞めたい」,また「与えられる役割が不本意である」と感じていることがわかった。自分が理想とする看護の姿と,現実に与えられる役割の不本意さに,病院を離れたいという内的要因が,多くの看護職にあるのではないか,この与えられる役割の不本意さから,看護職の多くは現場を離れるのではないかと考えた。
また,同じ調査結果から,看護職としての就業年数が短いほど,看護,仕事,生活について意識に「揺らぎ」があり,上司の関わりを期待していることがうかがわれた。これは,就業年数の短い看護職が,中間管理者の看護管理実践スタイルやリーダーシップの質に不満を感じた場合,そのことが看護職の早期離職を助長してしまう危険性があることを裏付けていると考えられる。
以上のことから,看護管理者に求められているのは,看護職が自ら役割を採用することのできるマネージメントではないかと考えた。今現在の仕事との関係についての信念であり,今現在,自分の行なっている仕事にどの程度関与しているかという概念である「仕事への関与度」は,看護者が自ら役割を採用する「主体的な仕事」であることと強く関連している。つまり,看護職と仕事との関係性,つまり仕事への関与度を高める看護管理実践スタイルが中間管理者に求められている。
具体的には,看護職の「個人目標や価値観」と「病院としての組織目標」をダイナミックに近づけることで,「仕事への関与度」を高めていくことが可能であろう。この個人目標と組織目標をダイナミックに近づけていく役割をとる者は,もちろん中間管理者である。
この仕事への関与度を高める看護管理実践は,中間管理者を頂点とするピラミッド型組織では,実現が難しいのではないかと考えている。仕事への関与度は,看護者個々の判断に基づいた行為が尊重され,その行為が個人のもので終わるのではなく,成員のものとなり,さらに組織に根付くことによって強化されると言える。そこで,この一連の過程を実践するために,効果的な仕組みを構築し運営するという体系的アプローチが必要なのである。
本稿では,筆者が看護師長を務めていた周産期センターで実際に導入した「仕事への関与度」に着目するマネージメント方式「セルフマネージングチーム制」について紹介したい。
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