金丸弘美のシネマライフ
酔画仙
金丸 弘美
1,2
1ライターズ・ネットワーク
2ニッポン東京スローフード協会
pp.1049
発行日 2004年12月10日
Published Date 2004/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100585
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魂の叫びを鮮烈に描いた画家
海外では優れた画家たちを題材とした映画がつぎつぎと作られている。最近では,アメリカの現代アート作家「ポロック」,メキシコの女流作家「フリーダ」など,いずれも見事な作品だった。世に出る画家というのは,自らの生命の内なる叫びを絵というかたちに表現にしているのだ,ということが,こういう映画を観るとよく理解できる。主人公の壮絶な生き様が,まさに絵画の色彩の豊穣さとなり表現される。その表現の広がりが,絵を観るのとは異なった味わいをもたらすのも面白い。
そして韓国からも素晴らしいアーティストを描いた力作が誕生した。イム・グォンテク監督による「酔画仙」である。このタイトルは,酒と女を愛し,興が乗らないと絵を描かず,放浪癖があった主人公チャン・スンオプ(張承業)の生き方からつけられたのだという。スンオプは,1843年(幕末の頃)に貧しい家庭に生まれるが,絵の才能に恵まれ,貴族の目にとまり,画家としての道を歩むこととなる。独学にもかかわらず,天才的とも思える感覚で,さまざまな絵画を模写し,大胆で豪放な新しい韓国絵画を創造する。しかし絵の注文がきて,身分が保証されるようになるとそれに飽きたらず,何不自由のない生活を捨て奔放な旅に出る。ときに女性に心を焦がし,酒を浴び,自分の魂の叫びを聞き,絵を描くのである。
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