連載 カラーグラフ
JJN Gallery・4
『春』—エドワルド・ムンク画
酒井 シヅ
1
1順天堂大学医学部医史学
pp.294-295
発行日 1996年4月1日
Published Date 1996/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905050
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この絵は「叫び」で,広く知られるムンクの作品である.「春」と題がつく.あの暗い,悲しい絵と同じ画家の作品だとはとても信じられない.窓から射し込む光,それに揺れるカーテン,窓辺の鉢植えの花は春の訪れを告げ,長い冬の終わりを告げるそよ風がほおをなでる.絵の主人公の女性が長い病の床から起き上がり,窓辺の椅子にようやく座って春の日を浴びているが,手にしたハンカチに血糊がついている.母親らしい女性の緊張が背中から読み取れる.うしろのテーブルには薬びんがあり,まだ完全な回復でないことを物語っている.春の光は病み上がりの女性にはまだまぶしすぎるのであろう.横に向けた顔に日光が当たる.
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