- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
2002年10月,厚生労働省はすべての病院および有床診療所の管理者に対し,医療の安全管理体制の確保を義務付けた1)。このなかには医療機関における事故報告などの医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策を講じることが求められている。このことは,いわゆる「インシデント・アクシデントレポート報告制度」などと呼ばれるインシデントや医療事故の発生に関する報告制度などにより,医療事故の発生を未然に防止することが目的である。また,このような医療事故報告は全国レベルまで拡大され,(財)日本医療機能評価機構で収集する体制がすでに整備されており2),さらには,医療機関が報告すべき医療事故報告の範囲が公表され3),本年10月1日から医療事故報告の義務化が開始された4)。
一方,医療事故の要因としてその重要な位置を占める医薬品や医療器材については本年4月より独立行政法人医薬品医療機器総合機構5)が設立され,取り組みの拠点となっている。この組織は,国の機関であった医薬品医療機器審査センター,特殊法人医薬品機構および(財)医療機器センター調査部門の3組織が統合したもので,「より有効でより安全な医薬品・医療機器を,より早く提供すること」をその使命としている。このようにさまざまなレベルにおいて患者安全,医療安全対策が講じられている。
本稿の目的は,医薬品や医療器材の不具合事例を提示し,医薬品および医療器材メーカーに対し,患者安全対策を求めるとともに,医療安全やリスクマネジメントに関わるわれわれリスクマネジャーがこのような事例に対しどのようなマネジメントをするべきかを実例を通して学びとることである。
なお,ここで紹介するエピソードについては筆者の経験や医療事故報道を参考に作成したものである。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.