焦点 臨床看護に関する研究の動向と今後の課題(Ⅴ)—20世紀から21世紀に向けて
基礎看護技術の研究の動向と今後の課題
太田 節子
1
1愛知県立看護大学
pp.375-384
発行日 2001年10月15日
Published Date 2001/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900632
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はじめに
「基礎看護技術」という言葉がわが国に定着するには,以下のような過程がある。まず,1950年代に吉田が著した「基礎看護―原理と方法』1)や永井の『看護原理』2)は,看護職が著した看護実践の基礎的援助技術の概念形成の先駆けとして重要である。1960年代には,波多野が『看護理論と実践の接点』3)において看護を科学的な学問として構造づけ,看護技術学を看護管理学とともに,個別科学へと方向づけた。この時期,物理学者・武谷4)による,「技術とは人間実践における客観的法則性の意識的適用である」とする技術の概念が看護界で取り人れられ,看護技術の理論化を強化した。桑野らによる「私たちの“技術論”」5)や川島編『看護における安全性』6)では,それまでの看護実践における個人の経験や技能で優れた援助技術を,安全・安楽の看護の要素から意識的に理論化する考え方が検討された。また薄井が「科学的看護論』7)を著し,看護技術は看護観の表現であり,専門職として科学的な目的意識(目的論)が必要であるとした。そして,看護方法論における看護方法として基礎技術を基本技術,特殊技術,応用技術として構造化した。さらに看護技術の適用過程には,実体に働きかける技術,認識そのものに働きかける技術,看護過程展開の技術があるとした。
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