特別記事
質的研究のためのデータ収集をめぐる諸問題
萱間 真美
1
,
Renée C. Fox
2
1東京大学大学院医学系研究科
2Emerita of the Social Sciences, University of Pennsylvania
pp.387-393
発行日 2001年10月15日
Published Date 2001/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900633
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インタビューにおける問題
ナースが研究を行なう上でのジレンマと利点
私は医療社会学を専門に,ペンシルバニア大学看護学部大学院において学位論文の指導を長らく行なってきました。今日はまずナースが質的な研究を進める際の困難な側面についてお話したいと思います。
ナースが患者や家族を対象として研究を行なおうとする時,ナースとしての役割とインタビュアーとしての役割が交錯してしまうという問題にぶつかることがあるかと思います。研究をするにあたって,ナースはまっさらな状態ではありません。患者の情報は知っています。どのような患者で,家族の状況はどうなっているかを知った上でインタビューをするわけです。その時,客観的にインタビュアーとして距離をおいて聞くのとは違う立場で聞くことになるのです。また,質問項目をどのような方向で作ったのか,例えば「家族の面会時間が十分ではないのでは」というのはナースとして,患者と家族の面会状況を知っているために生まれてきた関心の方向性であって,そうでなければたぶん生まれてこないといえるでしょう。
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