焦点 臨床看護に関する研究の動向と今後の課題—20世紀から21世紀へ向けて
転倒防止に関する研究の動向と今後の課題
泉 キヨ子
1
1金沢大学医学部保健学科(看護学専攻)
pp.185-193
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900555
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はじめに
1980年後半に筆者らが転倒の実態調査を計画して複数の施設に転倒調査を依頼した時,いつもは協力的な病院から「それだけはやめてほしい」と拒否された。当時,転倒は看護のミスとしての感が先行し,施設での実態を明らかにするのを躊躇したのではないかと考える。その後10年余りを経て,看護が医療現場の事故防止に組織的に取り組み,医療の質を保障するためのリスクマネジメントガイドラインが発刊され1),転倒のリスク管理は看護管理の重要な役割となった。
転倒はしばしば遭遇する日常的な出来事の1つである。しかし,高齢者や障害者にとって転倒により骨折などの損傷を受けると「寝たきり」の原因となることがあり,転倒防止対策は重大な課題である。また高齢者や障害者の転倒経験は致命的な損傷がなくても疼痛や自信をなくし,その後の歩行への不安感や恐怖心,さらに依存心につながり,廃用症候群から転倒後症候群を招くことが明らかにされている2,3)。
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