- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
私たちは大学院時代の同級生で,ともに質的研究を行なった。一体,どのようにしたら質の高い研究論文が書けるのかということは,私たちにとってたいへん切実な問題だった。大学院を修了した後もこの問題を追いかけ続け,看護学領域の質的研究に関する研究会(NQR)を立ち上げて,現在ちょうど2年が経過したところである。
その研究会のなかで私たちは,質的研究の成果を看護実践に還元していくためにはどのようなことが必要なのだろうか,ということについて議論を重ねてきた。そのなかで得られた1つの答えは,研究論文における論理的一貫性が要となる,ということだった。
質的研究が臨床で活用されるためには,実践者がそこで記述された結果を「なるほど」と思えること,実践者が自分たちの経験と照らし合わせ,記述された結果が自分たちの考える現実を言い当てていると感じられることが重要である。
このような質的研究から得られた成果の「現実への当てはまり感」を支えるもの,それを私たちは,「論理的一貫性」,すなわち研究論文のなかで記載されているさまざまな情報が,論理的な一貫性をもっていることであると考えた。
私たちは,本誌40巻2号において,質的研究論文の論理的一貫性をクリティークする1つのツールとして,サブストラクション・ワークシートを提案した(北・谷津,2007,pp.39-49)。質的研究論文のクリティークの特徴や,サブストラクション・ワークシート開発の経緯等の詳細については既稿を参照されたい。このワークシートは,特定の哲学的基盤をもたない,いわゆる質的記述的研究(グレッグ美鈴,2007,pp.54-55)を含む,さまざまなタイプの質的研究論文に適用可能なクリティークのためのツールであった。今回は,その内容を発展させて,研究方法論別のサブストラクション・ワークシートを提案し,その妥当性や活用可能性について検討したい。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.