新カリキュラム講座 一般教養課目・1
史学編III
松島 栄一
1
1東京大学史料編纂所
pp.32-35
発行日 1967年6月1日
Published Date 1967/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908856
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■中国・日本の史学史
明治に入ってからの日本においては,1880年代になるまでは,見るべきものが少なかった。そのなかで,注目すべきものは,福沢諭吉の「文明論の概略」や,田口卯吉(鼎軒)の「日本開化小史」であった。これらは,イギリスのバックルやギゾーの,いわゆる文明史観をとり入れ,従来の成果を利用して,新しい歴史を強調しようとしたのであった。これは,維新以後の文明開化=啓蒙的な時代のあとに,新しい時代の全体像を把握する必要が出てきたわけである。こうして欧米の歴皮的なものを書いたものが喜んで向けられ,学校教育の中にも「万国史」というようなものが組みこまれてくることとなったのである。
この文明史観を,わが国に移植した時代のあとには,民間史学の一部に,歴史的段階を明らかにしながら,政治的理念を歴史的に実証し,その理念を強調する理論的立場を歴史の上で主張しようとしたものである。
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