新カリキュラム講座 一般教養課目・4
地学編III
兼平 慶一郎
1
1千葉大学文理学部
pp.54-57
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908875
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地球科学の新しい発展分野
19世紀前半は地質学の歴史の上ではいわば黄金時代であったということはすでに述べた。当時,地質学は近代科学としての地位を確立した。地質学が発達するのにはいろいろな要因があったと思われる。その大きな要因の一つは18世紀末から16世紀にかけてのイギリスの産業革命であった。石炭や鉄鉱の需要の増大,運河の開発などは,岩石や地層の科学,つまり地質学の発達を促がした。このようにして発達した地質学は,地質学を研究する人達のみならず,生産にたずさわる人々の興味を大いにひきつけた。しかしただそれだけではなしに,当時の地質学は直接地質学とは関係のない一般の人々の興味をもひきつけたと言われている。それはなぜだろうか。地質学一現在,物理学や化学生物学に較べたら一般の人々には非常になじみのうすい地質学が当時においては,一般の人々の興味をひきつけたのはなぜだろうか。地質学が近代科学として確立された当時においては,地質学は極めて若々しい科学であった。新しい発見がなされ,新しい解釈がなされそして地球の生成発展に対する新しい説がつぎつぎに出された。それらの説の中には当時としては極めて進歩的な考え方が含まれていた。それは産業革命を経験してさらに発展しようとしている国の人々の興味をひくだけの魅力をもっていた。やがて1859年のダーウィンの「種の起源」の出版による進化学説の大成に地質学は直接大きな影響を及ぼした。
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