教育の眼
情操教育について
佐藤 忠男
pp.142-147
発行日 1974年2月25日
Published Date 1974/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906753
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今日の社会の文化的特色のひとつに,美のインフレーションという現象があるのではなかろうか.それは,カラー映画,カラー・テレビ,カラー印刷などの急速な発達によってもたらされたものである.私は,二十数年前に初めて色彩映画を見た時の,魂を奪われるかと思うほどの感動を今もはっきり覚えている.それは初期のテクニカラー映画であって,微妙な色彩の出せるフィルムではなかったから,今見たら,きっと,色彩的にはずいぶんつまらないものであったにちがいないのである.しかし,初めて見た時には,これは,世の中にこんなに美しいものがあるだろうか,と思うほどのものだった.“ロビン・フッドの冒険”という作品だったのだが,ロビン・フッドが馬に乗って森の中の水たまりを走りぬける場面の,月光に照らされた青い水しぶきを,まるで宝石をまき散らしたように感じたものである.
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