調査・研究
職業的能力としてのやさしさの育成(2)―臨床実習を通して看護学生のやさしさがどのように変化したか
大谷 和代
1
,
木村 久美子
1
1前:大阪府立公衆衛生専門学校
pp.652-657
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901432
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はじめに
現在の社会現象的問題の1つに,やさしさや思いやりの薄れが指摘されるが,看護学生の現状をみても人間関係が表面的で相互交流の深まりがみられにくい傾向が伺える.しかし,看護にとってやさしさは不可欠な要素であり,川島1)のいうように看護の道を選択した者は,その資質を普通の人以上にもっていると考えるなら,その資質が専門的職業人の能力としてのやさしさに育っていくための働きかけが看護教育に求められる.
前報2)では我々はやさしさ行動尺度を作成し,看護学生の考えるやさしさの概念やそのやさしさ行動と社会的スキルの相関などについて調査した.そこから,やさしさに関連した考え方やいわゆる向社会的行動の度合,関連因子の概要を知ることができた.やさしさの概念は7つのカテゴリーに分類されたが,そのなかでも「気持ち理解型」と名付けたカテゴリーの比率が高く,最終的に看護職に求められると考える「真のやさしさ志向型」は,13.6%にとどまっていた.また,我々の作成したやさしさ行動尺度と堀毛の社会的スキル尺度(ENDE2)2)との相関は高く,さらに,ENDE2尺度の3つの下位スキル(エンコード,ディコード,感情コントロール)の得点が高いほどやさしさ行動がよくとれるという結果が得られた.
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