- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本国内の看護師離職率は12.1%と高く,新人看護師の離職率も9.3%にも上る1)。このような看護師の高い離職率は,看護師不足を招いている。国内の看護師数は,人口1000人当たり9.3人2)であり,OECD諸国の平均9.7人3)を下回っている。看護師の離職を食い止める対策が早急に必要である。
看護師の離職を減らす要因の一つとして,職業的アイデンティティが注目されている。その職業的アイデンティティとは,専門職業人として,看護という職業や役割に結びついた行動や価値観を内在化し,職業集団に一体化していくこと4)である。職業的アイデンティティが高い看護師は,勤務年数が長くバーンアウトのリスクが低く5),ストレス耐性が高い6)と報告されている。
看護師の職業的アイデンティティは,看護学生のうちから確立される4)。特に看護学実習は,職業的アイデンティティの確立する過程において重要な鍵となると考えられる。藤縄らの研究では,専門職アイデンティティは,臨地実習を通して徐々に確立すると報告されている7)。そのため,臨地実習を通して得られるどのような要因が看護学生の職業的アイデンティティを高めるのか明らかにすることは重要である。その職業的アイデンティティは,学習意欲と関連すると報告されている8)。また,看護学生が看護学実習を通して,さまざまな困難を乗り越えて目的を達成し成功したという感覚である実習達成感9)は,看護学実習での学習意欲と関連すると報告されている10)。それゆえに,実習達成感と職業的アイデンティティは関連するのではないかと考えられる。しかし,実習達成感と職業的アイデンティティの関連は,これまで先行研究で明らかになっていない。
本研究は,看護学生の実習達成感と職業的アイデンティティがどのくらい関連があるかを明らかにすることを目的とした。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.