連載 人間と教育・23
環境問題に正対せよ
上田 薫
1
,
加藤 由美子
1前都留文科大学
pp.812-813
発行日 1994年11月25日
Published Date 1994/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900952
- 有料閲覧
- 文献概要
環境問題についてはもはや多くを言う必要がないはずである.小学生ですら相当に進んだ知識をもっている.ゴミ処理や河川の汚染という手近なことはもちろん,温暖化,酸性雨,砂漠化,森林破壊,海洋汚染,オゾン層破壊のことなど,どうしてこれほどまでにと思うくらい深刻な問題が私たちの前に展開しているのである.それぞれの現象に立ち入って見聞きしてみると,いずれも慄然というべき内容また状況なのだが,それでいてなんとなく遠いことのように感じられかねないところが,問題なのである.これから気をつけていけばなんとかなりそうな気がする.まさかそれほどひどいことになりはすまい.ついそう思ってしまうのは,この恐るべき事態が実は人類にとって徹底的に未経験のものだからであろう.まさしくこれは,未曽有のことである.
たしかに環境問題の見通しはむずかしい.温暖化によって海面がどのくらいあがるかという単純なことさえ,説によって大きく異なっている.複雑なことになればなおさらだ.もちろん大げさすぎる悲観は問題だが,楽観に過ぎれば完全に取返しがつかぬ.しかしことが深刻であればあるほど,世論はむしろ楽観に傾くというのが自然ではないであろうか.悲観的言辞はどうしても好まれない.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.