連載 人間と教育・4
教師の個性
上田 薫
1
,
加藤 由美子
1前:都留文科大学
pp.244-245
発行日 1993年4月25日
Published Date 1993/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900554
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今の教育社会では,学ぶ者の個性の尊重を説くことは,ごくあたりまえのこととされている.ほんとうにそれが目ざされているかどうかは少なからず疑問だが,民主的な社会では人間は個性的であるべきだというのは,たてまえの上で,だれもが認めざるを得ないことだといってよい.では,教師はどうであろう,すくなくも義務教育では,教師があまり個性的だと困るということはないのか.
考えてみると教師は,知的にも情的にも人に信頼されるだけの力を備えたなま身の人間なのであるから,当然世界観・人生観したがって教育観にも,自分独自のものを保持しているはずである.たしかに激しすぎたりひどく偏ったりしては問題もあろうが,それぞれに違った立場に立つのは,不可避,また不可欠のことだといってよい.が,そうなればどちらから見てもまんまん中で完全無欠,理想そのものなどということはありえないことになる.
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