連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・6
現象学的人間観(3)─気づかい/関心(つづき)
榊原 哲也
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1東京大学大学院人文社会系研究科
pp.920-925
発行日 2018年10月25日
Published Date 2018/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201106
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前回までの振り返り
本連載は,ベナー看護論を,そのベースとなっている「現象学」という哲学の視点から理解することを目的とし,ベナー/ルーベルの『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の5つの視点を,まずもって明らかにすることに取り組んできました。これまで,「身体化した知性」「背景的意味」という2つの視点を明らかにし,前回は第3の視点「気づかい/関心」について,半ばまで解説しました。
「気づかい/関心」とは,何らかの物事が気にかかり,大事に思われて,世界の内部に自分にとっての重要度の面から濃淡の差が生じ,大事に思われることがらに巻き込まれつつかかわることで,たとえば看護師として,看護教員として,子をもつ親として世界に巻き込まれつつかかわる,そうした私たち人間の根本的な在り方を示す概念でした。ベナーらは,こうした人間の根本的な在り方を,ドレイファスを通じて,ハイデガーの現象学から学び,これを現象学的人間観の「鍵」となる概念として位置づけるとともに,人間理解においても看護実践においても「第一義的」に重要なものとしてとらえているのでした。
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