連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・8
現象学的人間観(5)─時間性
榊原 哲也
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1東京大学大学院人文社会系研究科
pp.1076-1081
発行日 2018年12月25日
Published Date 2018/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201143
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本連載は,ベナー看護論を,そのベースとなっている「現象学」という哲学の視点から理解することを目的としており,そのため,ベナー/ルーベルの『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の5つの視点を,まずもって明らかにすることに取り組んできました。これまでに解説したのは,「身体化した知性」「背景的意味」「気づかい/関心」「状況」という4つの視点です。
ベナーらによれば,人間は,さまざまな「身体化した知性」の能力─すなわち生まれたときから具えている,反応したり学習したりする身体的能力や,誕生後に文化的・社会的に身につけられた姿勢,身振り,日常的な道具使用,専門的な熟練技能などの能力─を具えた存在であり,またその人が属している種々の文化や家族からさまざまな「背景的意味」を与えられ,それを当たり前のものとして身につけている,そうした存在でした。そして人は,そうしたなかでつねにそのつど何らかの物事が気にかかり,大事に思われて,その関心事に巻き込まれつつ,たとえば看護師として,看護教員として,子をもつ親として世界にかかわっていく,「気づかい/関心」という在り方をした存在であるために,現実世界のさまざまな関係性に巻き込まれつつかかわり,このかかわりを自己にとっての意味という観点から「状況」として,感情をともなった仕方で直接的に経験するのでした。
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