連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・10
大腿四頭筋─ほんとは背中側の筋
阿久津 裕彦
1,2
1順天堂大学解剖学生体構造科学講座
2東京芸術大学美術解剖学講座
pp.853
発行日 2018年10月25日
Published Date 2018/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201090
- 有料閲覧
- 文献概要
関節を曲げる屈筋は腹側に,反対の伸筋は背側にあるのが筋配置の基本です。そこから伸び出た上肢と下肢の筋配置も同様です。しかし人の下肢は,ちょっと奇妙です。確かに股関節は屈側が前です。ところが膝は,曲げると脛が背中側へ折れるので,伸側なのです。つまり,膝伸ばしの大腿四頭筋がある太ももの腹側は,本来は背側なのです。さらに,足の爪先上げも足首の伸展なので,なんと股関節より下の脚では,腹側と背側が反転していることになります。この奇妙な下肢のねじれた配置は人類だけのもので,4足姿勢から直立姿勢に立ち上がるとこうなるのです。
大腿四頭筋は4つの筋頭を順につくります。まず膝上の中間広筋をつくり,次に内側と外側の広筋をつくります。このとき,内側広筋の筋腹は膝蓋骨の上縁より低いことに注意しましょう。一方の外側広筋は太もも外側の輪郭を成しますが,筋腹が膝蓋骨の上縁を超えて下がることはありません。大腿四頭筋の4頭のうち大腿直筋だけは股関節を越えて骨盤の下前腸骨棘に付着します。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.