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まさに待望の1冊である。本書では,ルーブリックを道標とし,自律的に看護を学び,看護ができる学生を育てる教育をめざすパフォーマンス評価と,それに有効な逆向き設計論にもとづくカリキュラム設計について,授業や実習の科目単元としてのミクロな設計面と,カリキュラム全体としてのマクロな設計面が非常にわかりやすく具体的に紹介されている。しかし,単なる方法論の紹介にはとどまらない。本書の素晴らしさは,随所に散りばめられた著者たちの現場であるあじさい看護福祉専門学校の教育実践の軌跡から発せられるメッセージ性に依る。そして,それは学生自身が看護の専門性を価値づけられるよう導き,確かな実践力を身につけさせてきた実績,経験を土台に語られているからこそ,納得のいく重みがある。
1ページ1ページを読み進めていきながら,同校主催のプロジェクト学習研修に参加した際に感じた衝撃を思い出した。学生自らが学習を切り拓いている様子を目の当たりにし,学校を挙げて自律した学生を育てる教育実践がなされていることへの羨ましさと同時に,自校の教育実践が思うに至っていない悔しさを記憶している。あれから10年。以前にも増して,より一貫性をもったカリキュラムへと進化していることに感服する。看護基礎教育として本来のあるべき方向に向かい,カリキュラムの再構築にチャレンジし続けた教育実践の集大成としての1冊だといえる。最近では,雑誌などでさまざまなルーブリックが散見されるが,本書で示されるルーブリックがそれらと異なるのは,学生の学習活動および学習活動における具体的な評価規準を示している点である。学生の実践をともなう学習活動に指導の軸をおくことで,学生がルーブリックを活用し,自ら探求し学ぶ力を身につけることを主眼としている。
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