--------------------
書評 ─『看護教育のためのパフォーマンス評価 ルーブリック作成からカリキュラム設計へ』─教育評価の理論と実践例が往還し,「洗練した理解」を導いてくれる良書
水戸 優子
1
1神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科
pp.1037
発行日 2017年12月25日
Published Date 2017/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200887
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書は,「看護学生に○○できる看護師になってほしい」という,めざしたい姿をルーブリック評価で描き,そこから教授─学習方法を選び,そしてカリキュラムを設計していくという「逆向き設計」論の実践本である。
筆者自身も20数年間,カリキュラム設計,教育目標,教育方法の探究,開発に取り組んできた。そして最近は,教育評価,特に看護実践能力などパフォーマンス評価を可能にするルーブリックに関心をもち,取り組んでいるところである。そのなかで気づいたのは,ルーブリックづくりを考えるうえでは,カリキュラムの主要概念,教育目標と教育方法,教育評価がすべてシンプルにつながっていることが大切ということである。しかし,この気づきを支持する成書は世になかった。ちなみに本書のもとになった本誌の2010年12月の特集号を当時読んで大いに参考にさせていただいてはいたが,実践例としては興味深かったものの,理論的説明が十分とはいえず,評価の意義が伝わりにくかった印象が残っている。それが今回,本書を読み,大いに感銘を受けた。第1章と8章で教育学の専門家である西岡加名恵先生が「逆向き設計」論の基礎からパフォーマンス評価とルーブリックの基礎を理論的に解説していること,そして第2章から7章まで,糸賀暢子先生,元田貴子先生を中心とするあじさい看護福祉専門学校全体での実践例が豊富に紹介されているところにである。第8章や付録では一貫した教育実践例をとおしての解説やQ&Aまでが掲載されている。教育評価の理論と実践例とが行きつ戻りつ往還して紹介されているために,とても理解しやすいのである。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.