特集 いまなぜポートフォリオなのか─学生評価・教員評価の新たな展開として
教員自身のためのティーチング・ポートフォリオ
杉本 均
1
1京都大学大学院教育学研究科・比較教育学
pp.31-35
発行日 2007年1月25日
Published Date 2007/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100592
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日本の初等・中等学校で総合的学習の時間が導入されたことに伴い,近年ポートフォリオ評価法が脚光をあびている。ポートフォリオ(portfolio)とは,書類かばんや文書ファイルという原意から転意して,学習者の達成,向上,成長についての多面的な情報を「証拠」として継続的に収集し,それを教員や学習者自身にフィードバックして,よりよい決定や指導を行うための記録,そしてそれを活用した評価法を指している。この活動は,小学校から大学にいたるまで,特に達成や成果が数値化しにくい精神的・創造的・芸術的活動の評価に適した手法で,総称してラーニング・ポートフォリオと呼ばれる実践に含まれるものである。
このラーニング・ポートフォリオに対して,視点を変えて,教員・教授者が自らのために行う記録と評価がティーチング・ポートフォリオと呼ばれるものである。すなわち教員・教授者がある特定のプログラム(授業)において,何をどう教え,指導し,どのような関わりを持ち,その結果,学習者はどのような達成,向上,成長を果たしたかについての情報を継続的にファイルしてまとめたものである。ここでも学習者の成長は重要な情報であるが,ティーチング・ポートフォリオが,その情報によって評価し,変化することを意図している対象は学習者ではなく,教員・教授者自身の力量,技能,適性である。ここではその実践を,大学などの高等教育のプログラム(授業)とその教員に特化して論ずることにする。
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