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書評 ―『活動性を高める授業づくり 協同学習のすすめ』―学び合う学生の姿に感動を味わいたい方は試みて
近藤 麻理
1
1東邦大学看護学部
pp.485
発行日 2012年6月25日
Published Date 2012/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102101
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私が教育学の本を初めて開いたときに目に入った挿絵には,長いムチを持って教壇に立つ教師の恐ろしい姿があり,18世紀頃に至るまで子どもは「小さな大人」であると認識され,ムチによる教育が当たり前だったとの文言に驚いたものだ。現在でも,子どもへの体罰は是か非かなどの議論が巻き起こるのだから,教育にかかわることは常に挑戦者であり続けることなのだと思う。看護教育者にとって,「こんな看護職になってほしい」との願いがあっても,ではどんな教育をすれば理想とする看護職が育つのか,まだ世界的なゴールデンスタンダードは示されていない。
私自身は試行錯誤の授業方法を模索するなかで,この本に出会って幸せな気持ちになれた。焦っていた自分に,もっと大切な「教育とは何か」を見つめ直す機会をくれたからだ。近年の教育においては,競争原理に基づいた競争パラダイムが重視され,教え込むことで理解や暗記を促すという方法が多用されてきた。しかし,本書で述べられている協同パラダイムでは,知識を得るためには他者との対話が重要であり,仲間や教師との積極的な対話を通して,学生の無限の可能性を引き出すような授業展開が教育者に求められている。
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